気圧ルーム(生体治癒力向上装置)の原理を九州大学 赤木 右教授に説明していただきました。 (c) 2017 Kiatsu room
● 気圧ルームの科学
気圧ルームは気圧を下げて酸素濃度を減らす.戻すを周期的に繰り返します。酸素を減らすことが大切で効果があるのか、不思議に思われている方も多いと思います。酸素を正しく理解して頂ければ、不思議ではありません。さらに、酸素カプセルとの違いも分かって頂けると思います。
● 生命の進化と酸素
生物の進化は、それまでの生物が築いてきた遺産を引き継いで進みます。現在の空気には21% の濃度の酸素が含まれていますが、生命が地球に誕生した40 億年前の空気の酸素濃度はゼロでした。生物はしばらくの間、酸素を用いずにATP という物質を作っていました。このATP は生命活動を行う唯一のエネルギー源です。
空気の酸素が、現在ほどの高い濃度になったのは今からおよそ5億年前のことです。その頃の動物達の共通の課題は、次第に増えて来た酸素から身体を守ることでした。大きくてもウジ虫ほどサイズだったものが、5億年前には、しっかりとした殻を持った大きな動物が現れ始めました。殻の発達は酸素の苦手な細胞を直接酸素に触れさせないようにするための一つの方策です。そして、血液も酸素を捕まえることにより、細胞に触れる酸素の濃度を抑えて、各々の細胞に届けることを可能にした進化上の重要な発明でした。
生命の進化の歴史から、生命と酸素の関係について、三つのポイントが浮き出てきます。
ポイント 1 酸素分子は身体の中にはほとんどない
一口に酸素といっても、空気中の酸素はO2 という分子ですが、呼吸で取り入れた身体の中の酸素は、ほとんど赤血球のヘモグロビンというタンパク質に結合した状態で、化学的にはもはや酸素ではありません。空気中の酸素のような前者を酸素分子、何かに結合した酸素のような後者を結合した酸素と呼ぶことにします。酸素分子は何かに結合する性質が強く、酸素分子は結合した酸素に変わろうとします。
ポイント 2 身体の中の酸素分子は危険である
体内に入った酸素分子は、赤血球と結合することなく、そのままにして置かれると、細胞を作っている様々な物質と結合し、その結果、細胞を破壊し、癌化したり、老化をもたらしたりします。抗酸化物質という言葉を聞いたことがあると思います。ポリフェノール、ビタミンE など、いろいろありますが、これは身体の中の酸素分子を無害化するために、逸早く酸素分子と結合する物質です。
ポイント 3 生きるために必要なのは、ATPである
酸素分子は、赤血球に結合した状態で運ばれると、つぎに細胞の中にあるミトコンドリアという小器官の中でATP に変わります。そのATP は、代謝反応のエネルギー源で、人間が生きるために必要な、ありとあらゆる反応を動かすエネルギー源です。
●気圧ルームと酸素
身体の材料である細胞は、酸素分子の濃度がゼロだったころに作られたため、酸素分子が苦手です。でも、細胞の中の小器官ミトコンドリアは、いつもその酸素分子が届けられるのを待っています。この酸素分子を巡る葛藤に気圧ルームの効果を理解する鍵があります。
気圧ルームに入ると、身体が火照ったり、代謝が活発になったりします。これは、気圧ルームの効果が、『身体の中に入った酸素分子を赤血球により素早く結合させて、酸素が必要な細胞内の小器官ミトコンドリアに届ける』、ためです。そのことが、どんなに素晴らしい効果をもたらすか、前記の三つのポイントを理解すると分かります。
・身体の中に入った酸素分子を赤血球に素早く結合させると、身体の中の酸素分子が少なくなります。すると、細胞は無駄に壊れにくくなります。皮膚呼吸により皮膚から吸収された酸素分子も直ちに少なくなると、皮膚の下の生きている組織を傷めません。
・酸素分子は赤血球とよりしっかり結合すると、最終的にATP が多く作られることになります。傷んだ細胞があれば、ATP は修復の際に使われます。気圧ルームの場合には、前に述べたように傷んだ細胞が少ないので、ATP は他のもっと大切なところに振り分けられることになります。
●酸素カプセルと気圧ルーム
酸素カプセルと比較しましょう。 酸素カプセルと比較しましょう。医療行為として使われている酸素カプセルでは、酸素分子の濃度を上げます。すると、血中に酸素分子のまま、たくさん溶け込み、より多くのATP が作られます。その結果代謝が活発になるので、治療効果が期待できる訳です。違いは、気圧ルームでは血液が運ぶ酸素は、赤血球に結合した酸素であるのに対し、酸素カプセルの場合、血液が運ぶのは、危険な酸素分子です。
酸素カプセルの最も大きな問題は、身体はしばらくすると酸素分子を拒否するようになることです。この酸素分子の防御反応によって、次第に酸素分子を血液に送りにくくなります。そのような状態で、カプセルから出ると、皮膚の中に酸素分子が残りやすくなるので、酸素分子が皮膚を不必要に傷めることになるのです。
その結果、酸素分子を受け付けない身体はATP も作りにくくなるので、傷んだ細胞を修復しにくくなってしまいます。酸素カプセルの長時間の使用は、効果がないことは既によく知られていますが、実は危険です。酸素カプセルの効果は入室中に最も効果があるのです。
一方、気圧ルームの場合は、体内の酸素分子を減らしつつ、ATP をより多く作るために、酸素分子の拒否反応を引き起こさないので、その効果は入室中から入室後までも長く続くことが期待できます。
九州大学理学研究院教授 赤木 右
東京大学理学研究科修了
東京農工大学教授を経て現職
(c) 2017 Kiatsu room
気圧ルームは、調圧ルームや進盟ルームともよばれ、クレラップで、有名な株式会社クレハの研究員だった川上進盟(ゆきちか)さんが発明され、「生体治癒力向上装置及び生体治癒力向上装置の作動方法」という特許を取得しています。即ち、「人間に本来備わっている治癒力を向上させる」と言う特許です。
特許第5666343号「生体治癒力向上装置及び生体治癒力向上装置の作動方法」(2014年)
特許第4477690号「調圧装置及び調圧装置の作動法」(2010年)